精神力動的心理療法/カウンセリングとは
精神力動的心理療法・カウンセリングは、精神分析の理論や実践を土台として発展してきたアプローチです。精神分析という言葉を聞くと、「過去ばかり話すのでは」「難しい分析をされるのでは」といったイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし実際には、現在抱えている悩みや人との関係の中で起きていることについて、ご相談者の方と一緒に考えていくことを大切にするアプローチだと当相談室では理解しています。精神力動的心理療法では、一人ひとりのこころの複雑さや奥深さを大切にします。
精神力動的心理療法やカウンセリングでは、あらかじめ決められたテーマだけを扱うのではなく、自由にお話しいただくことも大切にしています。定期的に継続するカウンセリングの中で、ご相談者の方に自由にお話しいただきながら、今抱えている悩みや困りごとの中に、今までの人生でも繰り返し感じてきたような馴染みのある気持ち、考え、これまでの人間関係で繰り返されているパターンがより理解されてくることがあります。ご相談者の方が今抱えている悩みや生きづらさについて理解を深めたり、これまで行き詰まっていた部分に新しい見方や選択肢を見つけたりすることにつながることがあります。
時には、「もっと具体的なアドバイスが欲しい」と思う方もいるかもしれません。具体的なアドバイスが役立つことも勿論あります。一方で、生きづらさを抱えてきた方たちの中には、今まで周りのことを気遣いすぎて自分らしくいられなかった、自分の気持ちがわからない、周りにあわせ過ぎて自分の本当の思いや考えがわからない、空虚に感じる方々もいます。そのような人々にとっても、自分の気持ちや考えに気づき、それらを大切にしながら生きることについて考えていける体験になることがあります。すぐには言葉にならないことや、ご自身でもまだよく分からないことについても、時間をかけながら一緒に考えていきます。自由に思いのままお話をする中で、それにより今まで気づかなかったご相談者の方の気持ちや考えがでてくることがあります。また、そのような語りの中に、お悩みについて理解を深めたり、変化への糸口となったりするヒントが隠されていることがあります。
精神分析や精神力動的心理療法では、人のこころを理解することそのものを大切にします。そして、その理解が結果としてお悩みや困りごとの変化につながることがあります。
私たちが今どのように自分自身や他者を感じ、どのように人と関わっているかには、これまでのさまざまな経験が関係していることがあります。そのため、現在の悩みについて考える中で、子どもの頃のことや家族との関係、これまでの人間関係などについてお話しいただくこともあります。
これは、現在の問題の原因をすべて過去に求めたり、誰かのせいにしたりするためではありません。これまでの経験と現在の気持ちや人との関わり方が、どのようにつながっているのかを理解することが、今起きていることを新しい視点から考える手がかりになることがあります。
継続してカウンセリングを続けていくと、カウンセラーとの間にも、普段の人間関係で感じやすい気持ちや、関係のパターンが現れることがあります。例えば、カウンセラーに対して「分かってもらえていないように感じる」「こんなことを話したらどう思われるだろう」「期待に応えなければならないように感じる」といった気持ちが生じることがあります。
精神力動的なカウンセリングでは、そのようなカウンセラーに対する気持ちも大切なものとして、一緒に考えていくことがあります。カウンセラーとの間で起きていることを見つめることが、現在の人間関係の悩みや生きづらさについて、これまでとは違った角度から理解する手がかりになることがあるためです。
ご相談者の方からそのような思いを話してくださることもあれば、カウンセラーの方から「もしかすると、このように感じているのかもしれません」とお尋ねすることもあります。その場合も、カウンセラーの考えを一つの答えとして押しつけるのではなく、「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」というところから、ご相談者の方がそれに対してどう感じるかを大切にし、ご相談者の方と一緒に理解していくことを大切にしています。
精神分析的な心理療法やカウンセリングに馴染みのない方にとっては、カウンセラーからご自身がカウンセラーに対してどのように感じているのかを話題にされることに、それがポジティブな気持ちであれネガティブな気持ちであれ、居心地の悪さや恥ずかしさを感じることもあるかもしれません。また、「こんなことを気にするのは自意識過剰なのではないか」と感じることもあるかもしれません。そうした気持ちも、ごく自然なものです。
カウンセラーのそのような発言の背景には、カウンセラーとの間で起きていることが、カウンセリングの外での人間関係にも何らかの形で現れている可能性があり、それについて話題にすることが、ご相談者の方ご自身や、カウンセリングの外で起きている人間関係の悩みや、そこでの人との関わり方、ご自身のこころのあり方について考える手がかりになることがあるためです。もちろん、必ずしもいつもそうというわけではありませんし、いつも話題にする訳ではありません。心理療法は、ご相談者の方とカウンセラーとの唯一無二の関係の中で展開していくものなので、どの程度そのようなお話になるかは個々の場合により異なります。
ここでの説明は、精神分析を土台とした精神力動的心理療法/カウンセリングの特徴の一部になります。また、必ずしもここで書かれた内容からイメージするものを相談者の方が体験するとも限りませんし、体験したとしてその度合いは、相談者の方とカウンセラーの関係によっても異なります。
心理相談室まるーたが大切にしていること
当相談室では、精神力動的アプローチを軸にしていますが、現代の変化にあわせて発展してきた精神分析の理解も大事にしています。
また、当相談室では精神力動的な考え方を大切にしていますが、ご相談者の方を理論に当てはめて理解し解釈を一方的にするのではなく、一人ひとりの経験や感じ方、そしてカウンセリングに求めていることを大切にしながら、一緒に考える姿勢を大事にします。それが相談者の方の尊厳を守ることにつながり、そのような体験が、生きづらさや悩めるご相談者の方が本来の自分らしさを取り戻していくことにつながると考えるからです。
ニーズにも、さまざまなものがあると考えています。ご相談者の方ご自身が意識されているニーズ、差し迫ったニーズ、そしてお話を重ねていく中で少しずつ見えてくるニーズもあるかもしれません。また、内的な変化を求めるものもあれば、具体的な出来事や環境への対処について解決していきたいニーズもあると思います。それらについて、ご相談者の方と一緒に考えながら、必要に応じて、カウンセリングで求めるもの等について再度確認、共有したりしながら、アプローチしていきます。
今感じているお悩みや生きづらさについて深く考えていくことは、時にこころの痛みを伴うことがあります。しかし、その過程を急ぐことはありません。また、急げば早くお悩みが解決するというものでもありません。ご自身のペースを大切にしながら進めていきます。話したくないこと、準備ができていないと感じることは、話したい、準備ができたタイミングでお話していけます。
精神分析を土台としているときくと、カウンセラーが何か一つの解釈を押し付けたり、すべてを見透かされているように感じる不安もあるかもしれません。カウンセラーは、万能ではなく一つの解釈がいつも正しい訳ではありません。また、相談者の方のご協力なしにご相談者の方をより深く理解していくことはできません。ご相談者の方と一緒に考えながら理解を深めていくことを大切にしています。相談者の方のカウンセリングでのペースを大事に、丁寧にじっくりと向き合っていくこと、安心してお話しできる場をつくっていくことを大切にしていきます。
精神力動的心理療法にも、他の心理療法と同様に、時代とともに変わっていく側面と、変わらず大切にされている側面があります。オンラインカウンセリングと精神力動的心理療法・カウンセリングの組み合わせも、以前には一般的ではなかったものです。
オンラインという環境が心理療法のプロセスやカウンセラーとの関係にどのような影響をもたらすのかについても常に考えながら、ご相談者の方が安心してお話しでき、よりよいカウンセリングを受けられるよう、日々の研鑽を大切にしています。
お悩みや困りごとについて解決を一緒に考えながら、ご自身にとって納得できる道や人との関わり方を見つけていけるよう、お手伝いしていきます。